設立趣意書(昭和34年)

文化の進展は瞬時の猶予をも許さず、今や鍼灸術も世界の医学界に登場するところとなった。

翻って国内においては、これが科学化の掛け声と共に種々な研究が進められてはいるが、その大勢は鍼灸の臨床における諸現象を現代医学によって解明せんとするものの如くである。即ち、経穴を刺激の部位となし、経絡はほとんど顧みない状態であるが、かくては数千年の伝統を誇る東洋医学の真髄を学ぶことは全く至難となる。

病体を気血の変動とし、その病変を経絡の虚実として統一的に把握し、経穴を診断と治療の場として補瀉調整する経絡治療こそ、鍼灸術本来の正道である。しかして、この学理と術技を体得せしめて、真に病苦除去の実力ある鍼灸人を育成する事こそ、その科学化に優先すべき必須要件であるが、不幸にしてこれを誤る時は、その鍼灸術、即ち我が祖先の偉大な文化遺産を後世に伝承することは全く不可能となる。

ここにおいて、我々志を同じうする者、相図って東洋はり医学会を結成し、別紙綱領の完遂を期す。

以上の趣旨を諒とせられる同志は、来って本会に投ぜられん事を広く業界の諸君に訴える次第である。

綱領

1、我々は、臨床を通して古典を再検討し、病体を通じて経絡経穴を把握し、以て伝統的な鍼灸術の本道を体得せん事を期す。

1、我々は、正しい経絡治療の学理と術技を修得する事によって、鍼灸人としての人格と実力を涵養し、以て鍼灸家の社会的地位を確立せん事を期す。

1、我々は、古典による経絡理論を正しく理解実践し、経絡経穴の普及啓蒙に努め、以て偉大な祖先の文化遺産を伝承せん事を期す。

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