技術を伝承することの難しさ

2019年JSDFカレンダーより飛行艇US-2

先月、全盲で鍼灸師の岩本光弘さんがブラインドセーラーとして初の太平洋無寄港横断成功!とのニュースに感動した方もおられると思います。

快挙の6年前、2013年にも岩本さんは太平洋横断を目指すも鯨が船体にぶつかりヨットが沈没。数日間漂流し自衛隊の飛行艇に救助される九死に一生の思いをされています。この時、救助をした国産の飛行艇US-2が世界最高性能の名機なことはあまり知られていません。

US-2の開発は平成の中頃に計画が持ち上がりましたが、競合機にアメリカ製のあのオスプレイがいて計画が廃止になる可能性がありました。オスプレイが採用されると戦前から続く日本の優秀な飛行艇の技術が絶えてしまうとの危機感から、日本のメーカーは必死にプレゼンをして開発許可を勝ち取ります。そして造る以上は最高の性能をと、世界で他にない3mの波でも離着水が可能な機体を造り上げました。この機体がなかったら悪天候での岩本さんの救助は不可能だったそうです。 

この話を聞き、私は鍼灸師としてUS-2に妙な共感を覚えました。鍼灸術は戦後GHQにより野蛮な療法と誤解され廃止の可能性があったのです。そんな中で盲人の職業保護の意味合いもあり鍼灸術は生き残ります。そして現在も多くの患者さんを救っているのは紛れもない事実です。
その鍼灸術を生業としているブラインドセーラーの岩本さんを救ったのがUS-2というのは、巡り合わせの不思議さを感じずにはいられません

飛行機等には設計図がありますが、技術の伝承はそれが全てではありません。結局、人から人へと職人技といわれる技術が伝授されないと絶えてしまいます。伊勢神宮がまだ使える御社を二十年で建て替えるのは技術の伝承の意味もあるのです。
我々の脉診流経絡治療には設計図すらありません。60年続く経絡治療を絶やさないためには、集いて学んで、手から手へ伝えて行くしかないのです。そうして伝承された経絡治療は今後も多くの患者さんを笑顔にしていくことでしょう。そして、70年、100年と伝承していかなければなりません。(安場)

 

 

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